五十肩の原因と治し方/体操?注射?どっちが良いの?

日常生活で腕を肩より上に挙げる動作はあまりありません。使わない機能は低下しますので、ある意味現代生活では五十肩になるのも仕方ない事なのかもしれません。

ですが痛いものは痛いので、なんとかしなければなりません。

そもそも五十肩って?

そもそも五十肩は、五十歳前後の方に多く見られる症状って事で名づけられた俗称です。正式には肩関節周囲炎と言います。

この五十肩ですが、患者さん、術者ともに他の疾患と混同されている方が多いです。それがインピンジメントシンドローム(衝突症候群)と石灰沈着性腱炎(棘上筋腱のカルシフィケイション)です。

まあ昔は一緒に考えられていたでしょうし、症状も似ているのですが、現在はこういった原因がはっきりとしているものは五十肩から除外されています。

インピンジメントsynとの判別はさほど難しくはないのですが、石灰沈着性腱炎とのは判別つき難い場合が多いです。五十肩なのか石灰沈着性腱炎なのかを白黒はっきりさせたいのであれば、まず初めにレントゲンを撮られる事をオススメします。石灰沈着性腱炎ならば白く映りますので一目瞭然です。

基本的な直し方

次に原因と治し方についてです。まず前提としてどの部位の痛みでもそうなのですが、急性期には炎症を伴います。その場合の処置はRICEです。
REST(安静)
ICE(冷却)
COMPRESSION(圧迫)
ELEVATION(挙上)
で処置して下さい。

ちなみに炎症の5大徴候は
機能障害(動かすと痛い)
熱感(熱っぽい)
腫脹(腫れてる)
発赤(表面が赤くなってる)
疼痛(黙ってても痛い)
です。五十肩だろうがインピンジメントsynだろうが石灰沈着性腱炎だろうが、急性期で炎症の徴候がみられる場合はRICEです。適切な処置を行なえば、急性期は3~4日でおさまりますので、それ以降の話をします。

インピンジメントsynは、棘上筋を上腕骨と肩峰で挟みこんでしまう事で痛みが出ます。

なぜ挟み込んでしまうのかと言うと、無理な角度での肩関節の運動が原因で痛みが出る場合や、腕を挙上する筋肉を動かす神経系に問題が生じ、棘上筋が収縮しない状態で三角筋が収縮する事で痛みが生じる場合などがあります。

神経系の問題となれば、カイロプラクター的には第5、6頚神経の問題として、頚椎5,6番を施術とするシナリオを作るのですが、実際には転倒など外傷に伴う筋不全の状態が多いと思います。

石灰沈着性腱炎は、何故棘上筋腱部が石灰化するのかが不明、とされていますが、まずは外傷などにより石灰沈着部での炎症があり、その修復過程で石灰化が発生するのだと思います。

症状は急に発症する場合が多く、痛みのある急性期にレントゲン写真で白く映っていても、2~3週間後には石灰化が無くなっている場合が多いです。逆に石灰沈着を起こしても、炎症を起こさずに痛みが出ない場合があり、健康診断などでレントゲンを撮った際に石灰化が偶然見つかったと言うケースもあります。痛みの出る出ないの境目は、滑液胞に石灰が入って、そこで炎症が起こるかどうかにかかっているようです。

五十肩の作用機序・特徴考察

冒頭で五十肩の原因は不明としましたが、個人的には肩周りの靭帯(主に鵜口肩峰靭帯等)と関節胞靭帯の癒着だと思っています。初期には何らかの形で炎症があり、その修復過程において絆創膏が傷口にくっついてしまうかのように癒着してしまうのでしょう。

更に痛いからと肩を動かさないでいると、余計に癒着が進みついには関節拘縮にまで発展する場合があります。逆に傷口についていた絆創膏が自然に剥がれるかのように、積極的な運動療法を行なわなくても、半年から1年くらいで自然に治ってしまう場合もあります。

悔しい事にこれら3つの疾患ともに急性期では、炎症を抑える注射に良く反応します。インピンジメントでは痛みの箇所に、石灰沈着性腱炎では滑液胞に、五十肩では関節胞に打つようです。以前勤務していた整形で何の躊躇もなく、ダーツをブスッっと刺すかのように注射をしている所を何度か見た事ありますが、私は注射苦手なので痛々しかった記憶がありますw

急性期を過ぎた場合のカイロプラクティック的治し方ですが、インピンジメントsynではスイマーズショルダーで書いたように、棘上筋のエクササイズが効果的です。施術としてはAKA(Arthrokinematic Approach)滑り法とAKA抵抗運動が非常に効果的です。

石灰沈着性腱炎では石灰を吸収分解しやすくするように、周辺組織の血流改善をするくらいでしょうか。大抵は注射の予後が良いので、整形に勤務していた時以外、臨床的にはあまり遭遇する機会は少ないです。

王道的五十肩施術法

さて問題の五十肩ですが、自然治癒する場合があるとは言え、やはり積極的に動かしたほうが良いでしょう。

完全な関節拘縮まで行ってしまった方を3名ほど見た事ありますが、肩の可動制限は痛みを伴う骨性に近い感じのロックとなり、リハビリはかなり泣きが入る事になると思います。それでも完全に可動性を回復するには至らず、挙上をカバーするために身体を横に曲げてしまうので、胸椎、肋骨に無理がかかり、その部分にまで痛みを訴える方も居ました。

癒着の剥がし方としては、傷口と絆創膏を例に想像して頂ければお解かりの通り、バッと剥がすか、ジワジワ剥がすかです。傾向として女性のほうが痛み耐性が高く、バッっと行ってもらいたいようで、ドロップテーブルでアジャストメントを行なう方法が取れるので早期に回復します。対して男性は痛みに弱く、ジワジワと剥がすようにしたほうが良いようです。

腕の挙上は肩甲上腕関節を「2」とすると、肩甲骨が外側上方への動きが「1」の割合で行われます。肩甲骨は体幹と癒着しやすい傾向にあります。肩甲骨の可動性減少は、肩甲上腕関節に過度な負担をかける事になり、炎症→癒着へ発展する五十肩パターンも考えられます。

癒着の解剖動画:解剖注意

2:33あたりが肩甲骨の癒着です。

よって肩甲骨の可動性をつけて行く事も重要な施術と考えます。


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