仙腸関節研究

加筆、修正しました。

■仙腸関節研究

ここのページはメルマガに連載した内容をまとめたものです。
「はやくHPにアップしろ!」
との好意的(?)なご意見が多かったネタなので、面倒でしたがまとめてあげました。
バイオメカ的に証明されている箇所は、丁寧な文体で書かれています。それ以外はぶっきらぼうな文体。

ここまでやったのですから、後は自分で考えて欲しいのが本音です。つまり・・・
「質問は控えてくれ」
って事です。
それからクレームも受付終了です。あくまで仮説の部分が多いので、それを否定したいのなら勝手にどうぞ。

またしても、我バイブルをフルに参考にさせてもらった。しっかりと宣伝してるし、私のページを見て購入した者も数人いるので、出版社の方が見ていたら許してもらいたい。
カパンディ 関節の生理学 (3)
I.A.KAPANDJI
荻島 秀男監訳
嶋田 智明訳
医歯薬出版株式会社

1,仙腸関節の役割って何?

腰痛の原因にあえて含めませんでした。仙腸関節の問題は腰痛だけでなく、全身へ影響を及ぼすと考えるからです。
カイロを生業としている者にはなじみの深い名前だけど、一般の方はあまり聞かない名前だと思う骨盤にある関節の名前。 この関節を考えます。
昔の解剖学界では不動の関節と言われ、現在ではお医者様でも認める可動関節です。この関節は両側2対の腸骨に挟まれた仙骨とによって形成されています。

 

骨盤模型

①寛骨(腸骨、恥骨、坐骨。ここでは①を腸骨と言ってるヨ)
②仙骨
③尾骨
④仙腸関節

更に重要な役目をしているのが脳脊髄液の循環といわれています。脳は間脳、きょ う、延髄、脊髄と背骨を通って骨盤まで達していて、この脊髄が背骨の間から枝分かれして各臓器や筋肉、皮膚の感覚器へと伸びています。この脳から脊髄は硬い背骨で保護されているのですが、もう1つクッションを持っています。それが脳脊髄液です。

この脳脊髄液はクッション剤としてだけでは無く脊髄への栄養分の供給なども行っています。関節内部は髄膜関節で滑液(潤滑液)によって満たされています。つまり動く為に潤滑液がある立派な関節。この仙骨の上に腰椎5個、胸椎12個、頚椎7個、頭蓋骨が乗っかっていて、まさに仙骨を含めた骨盤は背骨の土台となっています。

この意味では、仙腸関節には安定性が求められます。体重をしっかりと受け止めなければならないので、ルーズな固定ではダメです。また、この安定性に相反する可動性と言うものも必要とされます。これは身体を前に曲げる際には腰椎の前屈動作だけでなく、仙腸関節も可動し仙骨を前屈させて体前屈を可能にしたり、2足歩行する際に股関節だけでは無く仙腸関節までも可動させて歩行をスムーズに行うようにしたりとかなり活躍しているのです。この可動性に関する研究は解剖学の専門家達からでは無く、仙腸関節を扱ってきた治療家達の研究がきっかけで解明されてきたように思います。

この液が上から下へ流れるのは誰でも理解出来ます。しかし、下から上へはいったいどのようなメカニズムで汲み上げられているのでしょうか?当然滞留したまま循環しなければ質や機能が低下するのは容易に想像できるので間違い無く循環しているのでしょう。
「下から上」
この力はどこから発生しているのでしょうか?側頭骨や後頭骨などがその循環に関与しているとも言われていますが、実はそれだけでなく仙骨の前後屈によってなされている、と言われているのです。人間の呼吸に合わせて仙骨が前屈、後屈を繰返し、これがポンプとなり前屈時に吸水し、伸展時に揚水しているのではないかといわれています。

カイロの1分野でSOTと言うのがありますが、この仙骨のポンプ作用に関して専門に考える流派で、脳脊髄液の流れを円滑にして自己治癒力を高めようと言うテクニックです。
これら大きな3つの役割を持った関節が仙腸関節なのですが、その可動方向に関しては様々な主張があります。

2,仙腸関節ってどんな形?

安定性、可動性、脳脊髄液の循環 これら大きな3つの役割を持った関節が仙腸関節なのですが、その可動方向に関しては様々な主張があります。
仙骨側の関節面はガラス状軟骨で、誰もが想像する関節面と同じようにその表面は滑らか。それに対して腸骨側の関節面は線維軟骨で形成され、仙骨側のそれとは違ってゴツゴツした感じです。よってこの双方の関節面はピタッとはまるようには完全一致しません。
仙骨側の関節面を横から見ると、耳介の形をしたL字型をしています。関節面は凹の要素が強いです。腸骨側はごつごつとしたイメージで、凸の要素が強いです。

仙腸関節仙骨側関節面

仙腸関節腸骨側関節面

この凹凸も容易にズラすことの出来そうな程度なので、全体的には、平面対平面の擦り合わせによる関節の、 「平面関節」 に近いと思います。しかし仙骨側の凹の要素により、L字上を腸骨側が移動する「レール状関節」 の要素も兼ね備えているので、平面関節とレール状関節の2つの要素を持ってい る関節と言うことが言えます。
カパンディ@仙腸関節モデル

これが、この関節の可動方向に関して様々な主張がある理由の一つと言えます。その他の理由としては、関節面の個体差(個人差)が大きいことにあります。
これを 大きく分けると静的脊柱動的脊柱の2つに考えることが出来ます。静的脊柱は仙骨側の関節面を見るとL字と言うよりはI字に近く、動的脊柱はL字の要素が強くなります。

カパンディ動的脊柱と仙骨

カパンディ静的脊柱と仙骨

レール状関節の要素が強く働いた状態を考えると・・・静的脊柱では仙骨上を腸骨が上下に動く要素が強く、前後への可動性は少ない。動的脊柱では静的脊柱に比べ前後への可動性が強くなる。と考えられます。この仙腸関節の差は、個人差だけでは無く、年齢差としても現れ、四足(ハイハイ)から2足歩行では、静的から動的へとその要素が強くなります。

3,可動性に関する説

I字状とL字状とに大別できる仙腸関節。 通常の可動方向としては、仙骨側凹面に沿って可動する「レール状関節」 優位の状態です。 上でも説明した通り、このレールは簡単に脱線しやすい形状にあります。それは仙骨側と腸骨側の関節面の不完全一致から誰でも容易に想像出来きます。
電車での脱線とは、通常の走行以外の力が働いた時であるのと同じように、仙腸関節の脱線(脱臼、亜脱臼とは別)とは
やんごとなき理由が発生した状態
といえます。

これは事故などの外的衝撃や、激しい痛みから逃げる為に身体を歪めている状態などです。(TO SNCS MEMBER:リスティングで言うとマイナスね。) この状態では、仙腸関節は軌道を無視し平面関節優位の状態になります。つまりどのようにも可動する可能性があり、通常なら考えられない関節の位置関係になったりするのです。(TO SNCS MEMBER:仙骨L-PIしながら、左腸骨INとかね。)
仙腸関節の可動方向に関してはL字型とするならば、

仙骨うなずきL字関節上に中心軸

仙骨うなずき仙腸靭帯中心軸

 

「仙骨の可動の中心軸となるのは、縦方向の面と横方向の面の分岐、丁度L字の角が中心軸とする円運動である。」
と言う説と、

「仙骨はL字を外周とした円運動で中心軸が存在し、その点は仙腸靭帯の集結している仙骨租面上にある。」
と言う説と、

仙骨うなずき恥骨中心軸

仙骨うなずきL字関節面に沿って直線的に可動

 

「仙骨に対しての腸骨の可動性を考え、腸骨は恥骨まで繋がり恥骨結合という関節があることを踏まえて、恥骨結合近辺に中心軸を置いて仙骨がその周りを円を描くように可動する。」
と言う説があります。これらは仙腸関節の可動方向を回転運動基礎と考えています。これに対して

「L字の横軸方向に直線的に可動する。」
と主張する説もあります。これは仙腸関節の可動方向を直線運動基礎と考えています。また仙腸関節の日常的な動きをみると、 仙骨が伸展することによって、骨盤の上口は広がり、下口は狭まります。逆三角形に近い状態を想像してもらえば良いと思います。この時両坐骨は狭まり両腸骨は離れます。
逆に屈曲することによって、骨盤上口は狭まり、下口は広がります。所謂四角い骨盤ってやつです。この時両坐骨は離れ、両腸骨は近づくことになります。(カパンディ関節の生理学 体幹・脊柱 P58参照)
妊娠初期では骨盤が赤ちゃんの受け皿となるべく、仙骨は伸展し上口が開いている状態に近いです。これに対していよいよ出産と言う場面になると仙骨が屈曲して骨盤下口が開き、生命が誕生します。 人間が誕生してから繰返されてきた仙腸関節の動きです。この事に目を向けることをせずに、 「仙腸関節は不動の関節」 とされた長い時代がありました。
カイロプラクティックでは、仙骨に対して腸骨が動いた場合と腸骨に対して仙骨が動いた場合とでは、全く別の捉えかたをします。仙腸関節には、この関節だけを可動させるためだけに存在している筋肉が有りません。腰部の運動や下肢運動の延長として仙腸関節を可動させているのです。
これまでの事は生体力学的に解明されている事実だと思います。

4,腸骨に対する仙骨動きと、仙骨に対する腸骨の動き(この辺からはaneeroの仮定の領域)

腸骨の運動は下肢運動の延長として捉え、腸骨の変位(ズレ)の多くは下肢から の影響で発生する場合が多いと思う。これに対して仙骨変位の多くは、腰椎運動からの影響で発生する場合が多い。 難しいのはその見極め。同じ関節なので、腸骨が変位したのか、仙骨が変位したのかが解かりづらい。
下肢を運動させて腸骨の可動性を検査したり、仙骨を押圧したりして検査するが、これだけでは判断出来ないと思う。更に下肢からの影響と腰椎からの影響は同時に起こる場合もある。こうなると仙腸関節の歪みは更に複雑になる。この複雑化した骨盤にカイロプラクティック施術を行うには、中間位的な状態の骨盤を想像出来なくてはならない。(骨盤の形には個人、性差等があるので、現状の骨盤から中間位を想像する)

さて矯正というものを考えてみると、仙腸関節の運動の支点というものが重要になってくる。シーソーであれば、右が下がっているのであれば、支点を越えて向こう側(左側)を下げることによって右が上がる。支点の手前を押しては余計に右が下がってしまう。 この支点を幾つか考える。

仙骨関節面モアレ

地球上で生活しているうえでは、骨盤に関しても重力の影響というのを常に考えなくてはならない。カパンディではWEISELの説として、体重PがF1とF2に分散され、その支えとなるのが、仙腸靭帯であると言ってる。(ホントか?私も不確実だ。読み返してくれ)。F1に対するCr、F2に対するCa線維。

仙骨荷重ベクトルに対する靭帯、関節面形状

上半身の体重を支える仙腸関節が強靭とは言え、靭帯のみで支えられるはずもなく、想定としては、仙腸関節面による拮抗が考えられる。それが関節面L字である理由ではないか?F1に対する横軸。F2に対する縦軸である。どうだ!理にかなっているだろう。これを人間の成長とともに考えると幼児期に見られる関節面が縦型とされるのは疑問がある。

カパンディには無くても、他の本で腫脹主張している人もいるだろうから、あまり威張らないようにしよう。

仙骨関節面ハイハイ時

ハイハイ時

仙骨関節面立ち上がり期

足ちあがり初期幼児期

仙骨関節面成人期

成人

ハイハイ時には将来横軸となる関節面が形成されていて、立ちあがりと共にその面がみかけ上縦型となる。

成長とともに脊柱弯曲が形成され、仙骨自体が前屈し、青色の部分は横軸となり、仙骨前屈に伴うF2方向への体重分散力に対して、縦軸が発達してくるのではないだろうか?

これから考えると、成人で縦型とされるタイプは、左図の幼児期のまま未発達な状態であると想像出来る。

つまりこの仮説である仙腸関節の発達過程やその形状から、体重支持は仙腸靭帯のみでは無く、仙腸関節面による支持性も十分に考慮してその動きの支点を考える必要があるのだ。

どうだ。この「仙腸関節の発達における体重支持性が関与する関節面形状変化」は、カパンディには無いだろう。と、言いながらも仮説なのだが・・・

基本的な腸骨が仙骨に対して変位した状態である、PIとASに関して考えると、仙腸関節の面に沿って可動するとしたら、中間層仙腸靭帯の一部が仙骨側付着部である仙骨阻面を支点として、L字関節面を弧を描くように回旋する動きである。

ではINとEXが発生した場合を考えてみる。

仙腸関節腸骨EX

【片側腸骨がEX変位した場合】
製作途中

仙腸関節腸骨IN

【片側腸骨がIN変位した場合】
製作途中

腸骨に対しての仙骨仙骨の変位を考えると、幾つかの軸が存在する。

製作途中

仙腸関節仙骨R-PI

腰椎のPRにカップリングした為の仙骨の変位

 

l_pi

腰椎のPLにカップリングした仙骨の変位

仙骨に対して腸骨が動いた場合
その1:
立位で片足に荷重をかけた場合、大腿骨頭から伝達された上方へ床反力は股関節を介して仙腸関節へ伝えられる。側方から見た状態では股関節は前、仙腸関節はそれよりも後方に位置するため腸骨は仙腸関節を支点に後方へ回転する。この場合古典的な考えである仙骨租面の仙腸関節付着部分が支点となり腸骨の指標である上後腸骨棘(PSIS)が後下方変位すると思われる。(=通常のレール状関節に沿った動きである為)

その2:
足を組んで座った 男性の場合、足首のところを膝の上に乗せた4の字のような座り方が多いと思う。この場合、股関節の屈曲により上に組んだ足側の腸骨は後下方へ回転する。また4の字で組むことによって股関節は外旋し、それに伴いPSISは内方へ変位する。 同時に腰椎は後弯した姿勢が多いと思うが、この場合骨盤のユニット全体が後方へ回転しながら、仙骨も後屈する動きをする。支点となる軸は、足を持ち上げたときに腸骨が後方へ回転⇒仙腸靭帯付着部仙骨租面を支点とし、足を外旋させてPSISが内方に移動することによって、仙腸関節は前方が開く形となる。そして仙腸関節の上半身支持と言う重要な役割を考えるとL字関節面の縦方向面に体重支持の能力は無い。つまり横方向面で体重を支えている。しかも仙腸関節は前方で開いているのであるから、後方で支える。つまりL字の横方向面先端に近い場所で体重支持しているはず。この時に腰椎の後弯化からの延長で仙骨の後屈を行うのであれば、その支持点(L字の横方向面先端に近い場所)を支点にして後屈するのではないだろうか?整理すると・・・
「つまり股関節屈曲からPSISは仙腸関節付着部、仙骨租面を軸に後下方し、股関節外旋によってPSISは内方へ移動する。腰椎後弯からの仙骨後屈は仙骨側関節面L字の横方向面先端に近い場所を支点に行われる。」
のではないか?と言う考え。 このような複雑なメカニズムを考えると長時間足を組むのは良く無いと言うのが解って頂けるかと思う。

腸骨に対して仙骨が運動する場合の支点を幾つか
その1:
中腰 立位で膝関節伸展位での体幹屈曲には、股関節、腰椎、仙腸関節が関与している。その中でもその可動範囲拡大には、お尻、太ももの裏の筋肉の柔軟性が重要になってくる。この筋肉の柔軟性が乏しいと腰椎がより前屈を強いられることになり、腰部の筋肉は長時間伸張される。これが中腰から発生する腰痛の原因である場合が多い。また腰部の筋肉が短縮していて、腰椎部の前屈が十分に出来なかった場合、仙腸関節にそのシワ寄せがくる。さて、この時の支点はどのようになっているのだろうか?前々回だったと思うが・・・
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仙骨が伸展することによって、骨盤の上口は広がり、下口は狭まる。逆三角形に近い状態を想像してもらえば良い。この時両坐骨は狭まり両腸骨は離れる。逆に屈曲することによって、骨盤上口は狭まり、下口は広がる。所謂四角い骨盤ってやつである。この時両坐骨は離れ、両腸骨は近づく
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との説明から仙骨が前屈することによって、両坐骨は開くことが解る。と、するならば、L字の横方向面は開きぎみの状態なので体重支持機能は存在しないことになる。となると両腸骨が接近して仙骨の縦方向面が挟み込まれていることになる。つまり縦方向面に体重支持機能が移る可能性があるのではないかと想像出来る。 結論としては、体幹屈曲に伴い仙骨が屈曲するためには、L字の角付近が支点となっているのではないだろうか? ちなみに第1仙椎を軽く押圧してあげると(当然治療家に言っている。一般の方は止めておいたほうが良い)前屈が向上する。また骨盤バンドをしたままでは前屈は低下する。しかもかなりの距離。思ったよりも仙腸関節が体幹の屈曲に関与している。まあ、思ったよりもと言うのがどのくらいなのだか解らないが。
断っておくが、?マークがついたものや、「であろう」的な表現はaneeroの仮説だ。どこ探してもこの理論を主張、証明している個人、団体はいない。私の考えだが、どうぞパクってくれ。出来る(活用出来る)ものなら。「パクるな!」なんてセコイことは言わない。 個人的にはカパンディを補完するほどの内容だとは思うのだが・・・

その2:
椎間板ヘルニア 一般的な外側性ヘルニアで説明する。(この一般的ってのもあてにならないが)後縦靭帯が真後ろにあるので髄核は後外側に膨隆しやすくなっている。つまり痛いのは「後外側」だ。この痛みから避けるように、(ヘルニア部分が神経根に当らないように)側弯する。これを疼痛回避性側弯と言う。右側のヘルニアであれば左側の大腰筋が収縮して疼痛回避する。 この大腰筋の収縮によって腰椎前弯が減少し、腰椎の逆回旋が発生する。(通常大腰筋の収縮は腰椎前弯を増強させるが、後方の痛みから疼痛回避させる為の大腰筋収縮は体幹を屈曲させ腰椎前弯を減少させる)通常の前弯がある場合側屈側に棘突起が回旋するのだが、後弯化した場合逆に回旋する。 これが仙骨にまで影響し、第1仙椎は右側が前方へ向くように回旋する。この動きは患側下肢に体重をかけないように膝関節を半屈曲位とした自己防衛反応とともに行われるので、右側仙腸関節は非荷重(寄り)な状態であると想像出来る。この事による腸骨後下方とともに相対的に第1仙椎右側は前下方に位置することになる。 この腸骨後下方の支点は仙腸靭帯付着部仙骨租面で、第1仙椎右側の前下方変位はL字の横方向面をスライドするように可動するのが理にかなっているように思う。

5,「すべての原因は仙腸関節」は逝って下さい!!

「その反対側の仙腸関節はどのように対応しているのか?」
とか、
「左右正反対な歪みがあったとしたらどちらが1次的な問題なのか?」
とか、
「現在ある歪みは、仙骨に対して腸骨、腸骨に対して仙骨のどちらなのかを判断するには?」
とか、
「仙腸関節部の痛みには、仙腸関節を施術するべきか?」
などの質問は受け付けません。どうぞ想像してください。知恵の輪のように。
これまでの内容をまとめると
レール状、平面状関節の2つの要素を持っている。
・仙腸関節はL字タイプとIタイプの2種類に大別することが出来る。
通常はレール状優位で可動するが、疼痛回避などの非常時には平面優位となる。
・L字タイプは脊柱の生理的弯曲が強く、Iタイプでは弯曲があまり見られない平坦な脊柱をしている。
・4足(ハイハイ)ではI字に近く、2足歩行でL字へと成長にしたがって変化して行く。
仙骨に対して腸骨が動いた場合、つまり下肢運動の延長から腸骨が動いた場合は仙腸靭帯が集結している仙骨租面を支点とした円運動をするであろうと想像出 来る。
腸骨に対して仙骨が動いた場合、つまり体幹の運動の延長から仙骨が動いた場合は、仙腸関節の体重支持点を支点として動くであろうと想像出来る。
と言うような内容だったと思う。 体重支持と可動性と言う相反する機能を持たなければならないが為に、その動きはとても複雑なものになってしまっていると思う。
次回からは仙骨が傾くことによる腰椎への影響について考えたいと思う。実はこれが言いたかったのだ。でも誤解されたく無かった。カイロプラクティックって言うと必ず取り上げられるのが仙腸関節だ。
「ヘルニアが原因では無い。仙腸関節に問題があった!」
とか
「すべての原因は仙腸関節にあった!」
とかの羅列である。耳や目にタコが出来てしまう。ウンザリであった。 なんでも仙腸関節で片付けられる訳ゃ無いだろーが。って事で現在まで当院のHPには仙腸関節を説明したページを作らなかった。それがポリシーとか信念って奴。 (SNCSでは仙腸関節の占める割合が多いけど)
脊柱の歪みや前後弯の強さなどは確かに仙腸関節が起因する場合が多くある。
「だけどそれだけじゃないだろ!」
ってのが私の意見である。 明らかに頚椎ヘルニアの症状なのに、一所懸命に仙腸関節にAKAを施している奴。おめえだよ!腕挙上で疼痛回避して手にシビレも出ているのに、30分以上仙腸関節いじって、あげくのはてに
「整形で頚椎牽引してもらったほうが良いと思います」
って、オイ!
っと、ここはオフレコってやつで・・・ つまり、そんな連中とは一緒にして欲しく無かったのだ。

6,それでも仙腸関節からの歪みについて
「仙骨の傾きが腰椎、胸椎と脊柱全体の歪みを作る」
と言う話しは何回かは聞いたことがあるかと思う。今回からはそんなお話。まず基本から。 仙骨が前屈したとする。この事により仙骨角(仙骨岬角と水平線のなす角度)が大きくなる。仙骨底が前傾する訳だ。これによって上体は前方へ倒れるようになる。身体を前に倒しながら歩いている人が居ないように、普通は上体を真っ直ぐに保とうとして腰椎を後方へ引き戻そうとする。これで結果的に腰椎の前弯が増強する。 仙骨が後屈したとする。仙骨底は水平位に近くなるので腰椎前弯消失、または後弯化して上体のバランスを保とうとする。 これが仙骨の前後屈が腰椎前弯に影響を及ぼす簡単な説明。仙腸関節右側がうなずき運動(前屈)したとする。仙骨底は右下がりになるので上体は右に倒れようとする。それを左に引き戻そうとして、結果的に腰椎は後方から見て逆C側弯を呈する。 仙骨左側が前屈した場合はこの逆のことが起こる。これが仙骨片側前屈における腰椎側弯発生メカニズム。腰椎の異常な弯曲は、腰椎部に病変や奇形、カイロプラクティックサブラクセイションなどが無い場合、仙骨の傾きを疑ってみる。

前回
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腰椎右凸側弯ってことは、腰椎間は左側が狭く右側がオープンって事になる。椎間板も「<」の形。右が膨らんで左がつぶれているような楔型になる。椎間板内 にある髄核は膨らんだ方へ移動する。つまり右へ押出されるような力が働く。こ れが髄核の周りを取り巻いている線維輪を破り、突き出たのが椎間板ヘルニア。
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としたが、これに対して
「< の形で狭い側にヘルニアは出ないのか」
と言う質問があったが、当然出る可能性はある。

右から左へ重い物を運ぶ作業は 左側へ髄核を押出すような仕組みになるからだ。ただ、これによって左側へヘル ニア原因の痛みが発生した場合は、その痛みから疼痛回避するので、ヘルニア上 位椎骨は右に側屈する。結果、椎骨間を「<」から「>」にするだろう。これに 対して腰椎右凸側弯が残っていた場合、ヘルニアより下の腰椎が逆Cで上の腰椎 はC側弯と言う、異常な側弯をする。これが長期化すると胸椎部、頚椎部にも補 正作用が現れる。

よくある
「椎間板ヘルニアに診られる側弯」
と言うのが図や写真で出ているが、あれはそのまま鵜のみにしてはイケナイ。実 際はヘルニアによる痛みの強さ、ヘルニアの出方、経過時間等によって側弯の種類は様々に変容を遂げる。

さて、仙腸関節に関してのネタなのでここらで一発、仙腸関節の大家と言われる 方の商品にケチをつけたいと思う。 それは何かと言うと 「仙腸関節ゴムバンド」 である。 腰痛って言うと何でもコイツで片付けてしまう大家がいる。確かに急性などには 頼もしい補助具なのだが、使い方によっては症状は更に悪くなる。それはどんな 時かと言うと・・・

7,なんでも「仙腸関節ゴムバンド療法」は逝って良しですね!
重度な仙腸関節面の炎症、可動性亢進仙腸関節などである。 この説明をする前に何故ゴムバンドで腰痛が軽減するか考えてみよう。明確に説 明出来る人って意外に少ないかと思う。 そう言う私も
「たぶん、こんな理由だろう」
と言う程度でしか説明出来ないが・・・
これまでの事から腰椎部前後、側弯は、仙骨の傾きに左右される可能性が高いと 言う事が解っていただけたかと思う。仙骨底右下がりから腰椎右凸で、左の椎間 関節炎症が発生した場合、左側椎間関節の炎症症状を緩解させるには、仙骨右下 がりを施術しなければならない。

しかし、仙骨右下が解消されたからと言って、日常的な生活で再び右下がりにな らない保証はどこにも無い。普通の動作でいくらでも発生する。すると左椎間関節はまだ炎症を持っていれば、動作によって痛みが出ることになる。
まずはこの“普通の動作でいくらでも発生する仙骨右下がり”と言うのを防止し なければならない。その為に仙腸関節にゴムベルトで半固定する。仙腸関節の動 きは制限される。しかし半固定なのである程度は動ける。 またゴムと言う素材での固定は、強い筋肉を1枚貼ったようなものだ。仙骨が適切な位置でゴムベルト固定したのなら、どんな動作をしてもある程度仙骨はその “適切な位置”に戻ってくる。また、ゴムの力によって仙骨と腸骨を密着させて “ピタッ”とはめ込もうとする力も働くだろう。軽い仙腸関節捻挫などでも効果 がある。
更に、前面においては腹筋の役割を果し、腹圧が上がる。これはお腹の中に高圧 の風船を入れた状態を想像してもらえば解りやすい。つまりこの腹圧自体が上半身の体重を支える柱と成り得るのだ。これが椎体、椎間板、椎間関節にかかって いた負担を軽減してくれる。ウェイトリフターがベルトを締めるのにはこんな理由があったのだ。ベルトを締めなければ簡単に椎体圧迫骨折や椎間板の損傷を招 く。
ここまで書くと良いことずくめになってしまっているのでそろそろケチをつける。 まず、長期間このゴムベルトをしている患者さんほどやっかいなものは無い! バンドに頼りきってしまっているので、骨盤周辺の筋力低下は老人並。(ご老人 に失礼かもしれない) ベルト無しでは日常生活からの影響に耐えられないよう な骨盤になってしまっている!ゴムベルトを販売する者は、1日の使用時間制限 を伝えるべきである。 このような仙腸関節は恐ろしいほど簡単に動く。我々は施術には神経を使うし、 低下した筋力の回復にはかなりの時間が必要となる。

ゴムバンド 何故、重度な仙腸関節面の炎症、可動性亢進仙腸関節などに使えないかって言う と・・・
仙腸関節を固定してくれるのだからとても良いように思うかもしれない。だが、 仙腸関節には椎間関節と同じように、関節面圧迫による炎症ってものがある。最近のお医者さんは認めてるようで仙腸関節にブロックなどを行うが、以前(かな り前)までは不動関節の元に無視されていた時代があった。 ゴムバンドにての仙腸関節圧迫はこの関節面炎症を強めるので、痛みが強くなる。 特に仙骨側はガラス状軟骨なので炎症によって発生した熱で、関節面が破壊され、 その面が再製される再に変形する可能性も考えられる。
また、可動性亢進仙腸関節(ハイパー)は、周辺靭帯の支持性が低下している状態と言える。大げさに言えばグラグラな状態(ホントに大げさね)。 それなら固定のためにゴムバンドが使えると考えるが、ゴムバンドを付けてもかなり強いハイパーでは仙腸関節の動きが制限でききれない場合がある。と思う。 つまり仙腸関節面圧をかけた状態で、可動してしまう。ギュウと押しつけてグリグリって感じ。これは仙腸関節面に炎症を招くことになる。つまり余計な疾患を作ってしまうのだ。 このハイパーは、どんな人がなり易いかと言うと、出産後の女性。
ではそんな方 はどのような固定が良いのかを考えると、ずばり
「さらし」。
これを巻くのが良 いと思う。 仙腸関節炎症などでゴムバンドを着けた瞬間に痛みが強くなる場合などは、この 「さらし」を巻く固定に好反応を示す。さらしは収縮しないので仙腸関節面を圧迫すること無く、固定が行えるのだ。でも巻くのにも技術が必要だ。ただ巻けば 良いと言うわけでは無い。

8,片側だけで良いのか?
カイロプラクターの悪いクセは 「アジャストさえしてしまえば良い」 と言う考えの者が多いと言う点だと思う。これは大きな間違えとともに、人為的 なハイパーを作る原因にも成りかねない。 以前にも取り上げたが、関節のフィクセーションとは

1,筋組織によるフィクセーション
筋組織の過緊張による関節の可動範囲の非対称的な制限

2,靭帯によるフィクセーション (⇒ここまでが、カイロの施術範囲ではないかと思います。)
筋の短縮につづく結合組織の短縮による運動制限

3,関節面のフィクセーション (⇒この状態にアジャスト行うと痛みがひどくなります。)
関節面の変性と癒着による固定
に大別できるかと思う。これを考えると「3」に対してスラスト系のアジャスト メントを行うことは暴力以外のなにものでも無い。「1」に対して筋弛緩操作を 行わずにスラスト系アジャストメントを行うことは、筋肉への損傷が容易に想像 出来る。これは絶対に避けなければならない。新たなトリガー形成の可能性があ るからだ。また「1」の段階では筋弛緩操作でフィクセーションはとれるのでスラストを行う必要は無い。理想としては十分な筋弛緩操作を行ったうえで「2」 の状態のみにスラスト系アジャストメントを行うべきである。 これを踏まえたうえで考える。
よくある疑問で
「右の腸骨が後方に回転しているのか、左の腸骨が前方へ回転しているのか」
と言うのがある。全体的な骨盤像としても、仙腸関節の形状としても個人差があ り、何を指標にして歪みを判断するのかが難しい。 一般的には下肢長短や可動触診法などを使ってアジャストメントするほうを決めて行く。伝統的と言うか古典的には、後方回転側を優位に判断しがちである。

し かし、骨盤とは両仙腸関節が正反対な動きをして日常でのバランスを取るのが普通だ。つまり右腸骨が後方なら左腸骨は前方へ回転するし、右上後腸骨棘が外へ 開けば、左上後腸骨棘は内側へ閉じるような形を取る。そう。左右仙腸関節は常 に連動しているのだ。(外部からの不意な衝撃による変位は除く)
とするならば、腸骨へのアジャストメントはイメージする中間位へと、両側同時 にスラストを加えるのが望ましいと考える。つまり右腸骨後方回転を戻すと同時 に左腸骨前方回転を戻すように。 カイロの伝統的というか古典的な施術技法としてのディバーシファイド、いわゆ るランバーロール系のテクニックは片側腸骨のみに対して行う。いかにも片側腸骨のみが「2」で、反対側は「1」であるかのように。
「片側(サブラクセイション)を治療すれば、反対側も戻る」
と言う発想。片側腸骨だけが「2」であるなら間違えでは無いと思うが・・・歩行のメカニズム等から骨盤連動性が解明されている現在では、片側「2」の状態 から反対側が連動して「1」の状態で変位した場合、この「1」の状態を維持出 きるのは僅かな時間で、殆どは「2」へ以降していると考える。まして治療院に来院するような状況を考えると、両仙腸関節とも「2」の状態である可能性が非常に高い。
また、逆に考えると片側を施術すれば、連動していた片側も戻ると言う発想があるが、残念ながら「2」の段階まで進んだフィクセーションは、なかなか自然 に戻ることは無い。 これに不満を感じた治療家達は考えた。(たぶん)  そこで楔型の補助具を骨盤下に入れて左右同時に矯正したり(SOT)、 落下式のベッドを使って左右同時矯正出きるようにしたり(トムソン、ピアーズ テーブル)、 瞬間急圧ピストル型の矯正器具(アクチベーター)で両側に相反するインパクト を与えて矯正する方法を考えた。

本来これらのテクニックは、患者側だけで無く、施術者側にも負担が少なく、効率の良い矯正法を考えて開発されたのだろうが、結果的には今ある骨盤の歪みに 対して、両腸骨(場合によって仙骨も)に接触して矯正する手法をとっている。

ディバーシ・ファイド・テクニックについて考えてみよう。大変興味深い研究結果として、仙腸関節は2mmを超えるサブラクセイションを起すことは無く、回旋も約1度であるらしい。さらに、ごく稀なケースを除きこの関節は空隙化しないらしい。つまり矯正音は発しないと言う事だ。

なんと我々が日頃聞いている音は腰椎ベッド側の椎間関節が開いた音らしい。

ならば、仙腸関節へのディバーシ・ファイドは意味を見出せないかもしれない。腰椎空隙化ならば腰椎にコンタクトしたほうが、よりセグメンタル・アジャストメントが可能なはず。

9,治療家とは、かわいそうな人達
いろいろな事を書いてきたが、それでも尽きないのが仙腸関節なのだ。それを勉 強しようって言うのだからカイロプラクターは物好きとしか言いようが無い。

再度断っておくが、これまで書いてきた内容はあくまで私的な意見だ。仙腸関節 は左右が連動して相反する動きをする。だから両側同時(場合によっては仙骨も )施術すべきだと思う。

って言うのも私的な意見。

私が両側腸骨を同時に矯正するために選択したテクニックは、トムソン・テーブ ルを使った施術だ。たまたま修行先がトムソン・テーブルを使っていたと言うの もあるが、現在この矯正方法はとても理にかなっていると思う。

前回の続きでもあるのだが、関節のフィクセーションには初めに筋肉の緊張によ るフィクセーションってもの(「1」)があってその次の段階で靭帯によるフィ クセーション(「2」)、関節面のフィクセーション(「3」)が発生するって 事をしっかりと解ってもらいたい。。

カイロプラクターの悪い所が、関節の調整 さえしてしまえば、他はどうにかなる。って考えを持っている所だ。つまり「2 」に対してアジャストメントさえしてしまえば、「1」の問題さえも解決する。 って考え。

そんなカイロマニアへ告ぐ!
「筋肉にたいするアプローチもしなければダメ!」
骨盤に関しては 大腰筋 腸骨筋 梨状筋 中殿筋 大殿筋 このヘンが最重要な筋群だと思う。場合によっては 大腿筋膜張筋 半腱様筋 半膜様筋 大腿2頭筋 大腿直筋 腰方形筋 なども骨盤を変位させる影響力が高い。 これらの筋群に対して、弛緩させるテクニックを考えると
・カウンターストレイン
基本的には圧痛点に接触しながら、起始停止間を他動的に近づけて筋を弛緩させ る。

・指圧、マッサージ、鍼、灸(注:要資格)
トリガーポイント、マイオフィシャルリリース(筋と筋膜に対するアプローチ) やマイオセラピー(筋にたいするアプローチ)などがあるが、これらのテクニッ クは有能なマッサージ師が昔っから行っていた。

・起始停止テクニック
筋肉の起始と停止部に接触して刺激を加えるテクニック

・ストレッチング
アメリカのおエライカイロプラクターでストレッチングを否定している者もいる が、スタティックなストレチングやPNFを応用したストレッチングはとても効果的だと思う。急性腰痛などはアイシングとスタティックストレッチングの繰返 しによって可動域が拡大するのは頻繁に見ることが出来る。
これらのテクニックを使って筋によるフィクセーションを解除して行く。スパズムなどでは何が原因で発生したのかを考えてあえてテーピングのみにして治療 を終える勇気も必要だ。


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