■「私はどんな腰痛なのか?」
身体の動きによって腰痛が出る場合、その腰痛の出る方向で、ある程度腰痛の原因が想定できます(絶対ではありません)。
<腰部の前屈>
・背骨中心寄りの痛み→椎間板、椎関関節、脊柱起立筋、大腰筋等。
・外側寄りの痛み→脊柱起立筋(腸腰筋)、腰方形筋。
1)腰部に出る痛み
腰部脊柱起立筋が伸張されて出る痛みの可能性が高い。よくある例としては、急性腰痛症などで損傷した組織を保護しようと防御反応が発生し、脊柱起立筋部に不随意的な収縮が発生した場合、前屈動作はこれを伸張するので、痛みが発生します。また、脊柱起立筋の深部で線維断裂が発生した場合、前屈動作はこれを引き裂く方向になるので、痛みが発生します。また、ハムストリングス筋(半腱・半膜様筋)の柔軟性不足により、腰椎部が必要以上に前屈を強いられ、脊柱起立筋が過剰に伸張されて痛みが出る場合もあります。また、椎間板ヘルニアが原因で痛みが出る場合も考えられます。
2)仙腸関節部に出る痛み
仙腸関節の炎症がある時に、この検査結果として現れる場合があります。仙腸関節の運動には、梨状筋、大腰筋が重要なカギを握っています。よって、これらの筋肉の緊張が仙腸関節の炎症を招いている場合がありますので、これらの筋肉の緊張も診るようにします。また、腰椎の可動性(前屈運動)減少、ハムストリングス部の柔軟性欠如によって、仙腸関節が過剰に運動しなければならないような状態が続いたときや、仙腸関節を圧迫するような転倒、事故などでも炎症を起こす場合があります。
L/S部の損傷は、仙腸関節の痛みとして捉えやすいですので、仙腸関節部の損傷とL/Sの損傷の判別が重要です。それに加え、椎間板ヘルニアによる放散痛の可能性も考えられます。
3)臀部、大腿後面に出る痛み
ハムストリングス筋が緊張しているため、それを伸張しようとする動きでストレッチ痛が発生する場合や、腰椎部の可動性減少によって、ハムストリングス筋が過剰に伸張しなくてはならず、ストレッチ痛が発生する、などが考えられます。また、椎間板ヘルニアなどでは膨隆した髄核が神経根を圧迫し、放散痛として下肢に痛みが発生する場合があります。4)下腿後面に出る痛み
下腿三頭筋が緊張し、それが伸張されるために起こるストレッチ痛の可能性があります。この下腿三頭筋が緊張する原因としては
・痛めた腰をかばう事が原因
・膝関節の疾患が原因
・足関節の疾患が原因
等が考えられます。
また、腰椎椎間板ヘルニアが原因で症状が出る場合があります。
<腰部の伸展>
1)腰部に出る痛み
椎関関節は脊柱後方にあります。腰椎前弯の増強、腰を伸展させる運動の過反復、大きく重い荷物の運搬などから、椎関関節の炎症が発生する場合があります。腰部の伸展動作は、この椎関関節の関節面をより圧迫させる運動になります。
伸展動作で腰部単体に出現する痛みの多くは、この椎関関節症候群の割合が高いと思います。また、カイロプラクティックの施術によって改善する可能性の高い疾患だと思います。
腰椎前弯が進み、ある腰椎分節に繰返しのストレスが続くと、椎弓部での骨折、つまり腰椎分離症になってしまう場合があります。伸展動作は痛みを増します。主に腰椎4、5番に発生しやすく、下位椎体上面が前傾していますので、すべり台のごとく、分離椎骨椎体が前方に滑り出したりすることがあります。これを腰椎分離すべり症と言います。こうなってしまうと脊柱管内で馬尾神経が圧迫されますので、両下肢に神経根圧迫徴候が発生し、「間欠は行」と言って、100M歩くと下肢がシビレて、しゃがんで腰を丸めるとまた歩行できる、を繰返すようになってしまいます。椎間板ヘルニアによる疼痛の可能性もありますので、疼痛出現部位や、他の運動検査の結果などと照らし合わせて、その可能性を探る必要があります。
2)仙腸関節部に出る痛み
前屈検査時と同様に仙腸関節の炎症によって、伸展動作で痛みがアップする場合があります。この際注意しなければならない点は、L/Sの椎管関節症候群や腰椎分離症です。この痛みが「仙腸関節の痛み」と間違えやすいのです。腰椎部に問題があるにも関らず、無造作な仙腸関節へのマニュプレートは、症状悪化の可能性が考えられます。大腰筋緊張している場合、伸展動作はそれを伸張させる方向になりますので、ストレッチ痛が発生する場合があります。
患者さんが痛みを示す場所は、仙腸関節周辺を指す場合が多いですので、仙腸関節の炎症と大腰筋緊張によるストレッチ痛との判別が必要です。
3)臀部、大腿後面に出る痛み
椎間板ヘルニアによる放散痛の可能性が考えられます。伸展することによって椎間板ヘルニア化した髄核がより後方に移動して、それが椎間孔を狭小化して神経根を圧迫、結果放散痛となって現れるケースです。また椎関関節症候群による関連痛として大腿後面に痛みが広がる場合があります。関連痛とは障害を受けている場所から離れた場所に痛みが生じる事を言います。放散痛も関連痛の1種と言えますが、椎関関節症候群による関連痛は神経の支配領域などとは関連性の無いところに現れたりします。
分離すべり症から脊柱管狭窄症に進行してしまう場合と、変形性腰椎症や黄色靭帯が加齢などの原因により、厚みを増してしまい脊柱管狭窄症を引き起こす場合があります。これは脊柱管内が狭まってしまう為、脊髄神経や馬尾神経が圧迫され、当該椎骨以下の神経支配領域に知覚異常や、筋萎縮などが現れる症状を言います。典型的な症状は、間欠は行です。
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