はだしのゲンの問題シーンを解剖学的に考えてみた

■日本刀で切れるのか?

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はだしのゲンが学校で回覧できないだの、できるようになっただの、その辺の議論に関してはあえて口を閉ざすコトとし、カイロ師の端くれとしては、問題のシーンが可能なのかどうかを論じて行きたいと思います。

まずは「関節は不思議」にあるように、頚椎の構造から日本刀で切断出来そうな箇所を考えると、後頭骨と頚椎1番の間を狙うと言うのが妥当です。
ここはリングの上にボールが乗っているような構造をしていますので、上手に狙えれば骨性の障害が少なく切り落とす事が可能だと思います。

では他の箇所は切断出来ないのでしょうか?「はだしのゲン」図では下部頚椎を切断しています。当然後頭骨/頚椎1番を切断したとしても、下顎骨に当たりますので図のようには行きません。よって下部頚椎を切断する方法を考えてみます。

私は日本刀の切断能力を知りません。刀の切れ味を試すために、死体を7体重ねて胴体を両断した、等の逸話もあるようです。もし前腕や上腕、大腿などがスパッときれいに切断出きるのなら、正直頚などどの部分でも図のように切り落とす事が出きるでしょう。

しかし真逆の意見として、日本刀は骨に当たると刃こぼれする、との話もあります。当時の軍刀がこの程度の切れ味だとしたら、いかに扱う者が達人だとしても「はだしのゲン」の絵のようにスパっと切断するには、出きるだけ骨組織を避けなければなりません。

それでは頚のレントゲンを見て行きましょう。
これは側面からの写真で、被験者のストレートネックの状態が見て取れます。

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白く映っているのが骨組織で、黒っぽい部分が軟部組織です。後頭骨/頚椎1番を狙わないのであれば、椎体側は椎間板を狙わないとなりません。ちょうど上の写真で言うなら横の赤いラインです。しかしこのラインで切ろうとすると、椎弓部分で椎間関節や棘突起にぶつかってしまいます。

ならば頚を思いっきり屈曲させて、棘間から椎間関節、椎間板のラインを合わせてみてはどうでしょうか?

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残念ながら椎間関節が脱臼でもしないかぎり、椎間関節棘突起にも当たってしまいます。写真はストレートネックなので屈曲の可動性が少ないためにこのような結果になりましたが、正常な可動性を有していたら棘間のラインは椎間のラインにギリギリ合わせられるかもしれません。

椎骨が正常な可動性を有していて思いっきり屈曲させて軍刀が下部頚椎椎間関節を両断できるとしたら・・・

ん?

でもちょっと待って下さいよ。
なんか条件つきまくりじゃないですか。やっぱり無理があります。いくら達人だとしても解剖学的知識を持たない人間がこの棘間をすべり込ませて椎間ラインを狙うなんて出来やしませんテ。解剖学知ってたとしても狙えるかどうか・・・ 私ゃ無理ですね。

結論として「はだしのゲン」の問題シーン。これは解剖学的には事実無根だと思います。よって「この漫画の問題シーンはフィクションであり実在の人物・団体とは何の関係も無いんだからね」と記載すべきかもしれません。

所謂名刀なら話は別ですよ。