肩こり【Stiffness of the shoulders】
肩こりをカイロプラクティック的に考えてみます。
我々が扱う疾患の中でも、実は肩こりは難しいのです。
肩こりは単なる柔軟性だけの問題か?
非常に筋肉が硬い方でも
「肩こり知らない」
って人もいますし、たいして硬くなくても
「ひどい肩こりなんです」
って訴える人もいます。
通常女性は男性と比べると柔軟性に富んでいますが、肩こりは圧倒的に女性に多いと思います。この肩こりが特に女性に多い事を考えると、肩こりってのは柔軟性だけの問題で片づけられるほど簡単なものではなさそうです。
その証拠に同じ持続姿勢であっても、嫌いなデスクワークでは肩こりを強く感じたりしますが、楽しい映画を見ている時には肩こりを感じなかったりします。
パソコンを使うときなどの、持続姿勢からの筋疲労が肩こりの原因となる場合もありますが、様々な要因の積み重ねにより、症状として現れてくるのが肩こりなのではないでしょうか。
つまり単一的な原因だけではなく、様々な要因を一つ一つ解決して行く事をしなくては、肩こりは無くならないと思います。
このページでは、様々な要因の一つである姿勢について考えてみたいと思います。
肩こりの原因⇒頭は重い
前方屈曲
頭の重さは成人で4~8kg位だと言われています。よって、重要なのは頭と身体の位置関係。簡単に言えば、横から見て肩先よりも頭が前方 に出ている状態は良く無いと言う事になります。
よく見られるケースで言えば、前方屈曲と前方移動の状態です。 この時筋は伸張性収縮と言う状態で、伸ばされながら収縮している状態と言えます。
よって筋・筋膜性の疲労、血行障害による疲労物質の蓄積、収縮した筋組織によ る侵害受容器(痛みを感じる神経終末)への刺激などが起こることになります。単純に筋が収縮して硬くなっている肩こりは稀だと思います。
前方移動
これを読んで
「ウソだろ?」
と思われた肩こりの方がいらっしゃいましたら、1度整形外科を受診してみて下さい。頚部横からのレントゲン写真では、殆どの方が正常な頚椎前弯を消失しています。
これを理解するには
「頚と腕の痛み」
カリエ著 荻島訳 医歯薬出版社
を読まれる事をオススメします。
カリエ氏の話しでは、成長期に上向神経系の発達があり、この時期に作られた姿勢を「正しい」 と認識してしまうらしいです。 確かに神経系の発達は10歳くらいまでに行われ、その期間に覚えたものは一生忘れないといわれています。
「3つ子の魂100まで」
「スズメ100まで踊り忘れず」
というのも、この神経系の発達を象徴した言葉と言えます。
ではこの期間に認識してしまった姿勢を変える事は出来ないのでしょうか?
結論から言えば、出来る と思います。 大人になってからの習い事と一緒です。成人してから水泳をはじめて、立派に4泳法泳げるようになる人は、どのスイミングスクールでも容易に見る事が出来ます。
これと同じように姿勢を再教育して行く訳です。10歳台の子供のようには行かないかもしれませんが、繰返し学習する事で新しい姿勢を認識出来るかと思います。
ただし、結構大変 かもしれません。 お箸の持ち方のヘンな大人が居たとします。この大人が正しい持ち方に矯正するとなると大変です。これを姿勢に置き換えて考えると・・・どれだけ大変なのかが想像出来るかと思います。
■“心”も肩こりに影響を与える?
姿勢は心理的な状態を反映しているものです。合格発表会場で受験番号が見つからなかった人は遠目でもわかりますよね。ガックリと肩を落とした姿勢。あれは肩こりの原因となったりします。この場合には精神的に健康な状態を保つようにする事が大切でしょう。
更に、痛みが原因で姿勢を変化させている場合もあるのです。この場合はムリに姿勢を変えようとすると、痛みが強くなったりします。痛みが治まってから身体を戻す必要があります(例:ヘルニア)。 さて頭部の前方屈曲と前方移動となった原因を考えてみると、上記のように、
・成長期の不良姿勢を引きずって
・精神的なダメージによって
・痛みから逃げて
などが考えられます。更に臨床上のキーワードとなるものに
・パソコンに向かう姿勢
・胸椎後弯からの影響
・筋力低下
・骨盤前方移動
などが考えられます。つまり部分のみで考えるのではなく、部分と全体、全体と部分、精神的状態や環境などを照らし合わせながら考える必要があると思います。
■筋肉をほぐしただけで肩こりは解消する?
頭が前方にある状態では筋肉が伸ばされ、誰が触っても“ピンッ”と張っているのがわかります。これは筋肉が伸ばされながら収縮している状態なので、これを解消するには、筋肉を短縮させて弛緩させる必要があります。
これに対してマッサージなどの方法が有効であるのは、筋筋膜が張った為に蓄積された疲労物質が血流改善によって解消された結果だと思います。また、触覚刺激による痛み緩和のメカニズムも働いたかもしれません。ですが、これは一時的なものです。頭部前方への姿勢が変わらなければ、残念ながらすぐに再発するでしょう。
カイロプラクティックではこの頭部屈曲や前方移動姿勢に対してのアプローチを考えます。結果である筋筋膜への対処と同時に、その原因である姿勢を改善する方法を患者さんと一緒に考えて行くのです。
なんで頭が前方へ行ってしまったのでしょうか?
これを考える事が大切で、 単純に頭部を後方に持ってきても、その原因を解決しなければ、また頭部は前方 に行ってしまいます。
まずは頚椎部で可動性の悪い箇所を改善する為の施術を行います。そして頚椎弯曲を正常な状態へ近づける為のアプローチを行います。患者さんによっては簡単なエクササイズをお願いすることもあるでしょう。この繰返しによって、失いかけた頚椎前弯を再製して行くのです。これにより肩周辺の筋筋膜の緊張は解消されて行く事と思います。
長年の肩こりでお困りでしたら、1度カイロプラクティックを受診されてみてはいかがでしょうか。ある程度の期間をかけて姿勢を改善する事で、しつこい肩こりから開放されるかもしれませんよ。