以前から頭痛に関するページを作成しようと思っていましたが、なかなか重い腰を上げられずにいました。その理由は簡単で、頭痛に関して知りたいなら頭痛大学のサイトで全て間に合うからです。一般人から専門的に知りたい人までを満足させる内容で、とてもユニークに読みやすくまとめられております。ただただ敬服の一言に尽きます。
と言うわけで、当サイトでは頭痛に対するカイロプラクティック的アプローチに関して、出きるだけ解かり易くまとめてみたいと思います。
■“いける頭痛”か“無理な頭痛”か
全ての頭痛をカイロプラクティックで扱えるわけではありません。まず我々カイロプラクターがいける(施術できる)頭痛なのか、無理(施術不可)な頭痛なのかが判断できないのならば、その頭痛には手を出すべきではありません。
頭痛の90%以上を占めると言われているのが一次性(善玉)な頭痛です。一次性頭痛は潜在的な病気が起因ではなく、頭痛そのもの以上の危険を及ぼしません。群発性頭痛、片頭痛、緊張性頭痛などがこれにあたります。群発性頭痛に関しては即時的効果が得られない場合もありますが、これらは“いける頭痛”です。
これに対して二次性頭痛は、潜在的病変によって引き起こされる頭痛で、至急医師の診断を必要とするものに、くも膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下出血、ウィルス、細菌等の感染による脳脊髄液を培養しての髄膜炎などがあります。当然“無理な頭痛”です。
二次性頭痛の中にも、目の疲れや顎関節症が起因となるものがあり、これらに対してカイロプラクティックは“いける”と言えます。
■サインを見逃すな
どの疾患でもそうなのですが、施術そのものよりも、診断のほうが重要で価値のあるものだと思います。特に頭痛に関しては命に関わる場合もあるので、“無理な頭痛”を見分ける知識、診断力は必須です。
・くも膜下出血
突然金槌で殴られたような激しい痛みが特徴で、頭痛の他にボケ、ものが2つに見える、麻痺、ひきつけを起こす、テンカンなどを伴う事が多いです。即時脳神経外科へ向かう必要があります。
・脳腫瘍
簡単に言えば脳(グリア細胞他)のデキモノで、膨らんだ腫瘍によって脳圧が高まり、これも即時脳神経外科へ向かう必要があります。
・慢性硬膜下出血
ささいな頭部打撲などによって1~3ヶ月後に、硬膜下に血液が溜まってくる事で発症します。脳腫瘍と同様にボケなどの症状が出ます。即脳神経外科へ向かう必要があります。
これら脳に関わる頭痛の場合、ボケ、ものが2つに見える、麻痺、ひきつけを起こす、テンカンなど普通と違う症状が出ますので、この時点で即脳神経外科へ向かって下さい。CTやMRIは一次性頭痛との判別をほぼ完璧に行なう事が出来ます。逆にCTやMRIで問題が無く、医療機関による治療に改善が見られないのであれば、カイロの選択も考えて下さい。
・髄膜炎
頭痛、発熱、嘔吐、けいれん、意識障害、首が硬くなるなどが特徴です。即脳神経外科へ。
■“いける頭痛”に対する古典的カイロプラクティック施術理論
まずは従来的な考え方を解説します。これら“いける頭痛”を緊張性頭痛、片頭痛、群発性頭痛と分けて考え、それぞれに特異的な施術を施すというものです。
・緊張性頭痛
その名の通り、頭部周辺の筋が緊張する事によって起こる頭痛です。ズーンと来る様な重い痛みが特徴です。頚肩周りの筋が凝ることに、頭の筋も同調してしまう事で発生する場合が多く、頚肩筋をマッサージ等で弛緩させると頭痛も和らぐとされてきました。また、自律神経系系で考えるのなら、交感神経系優位な状態といえますので、副交感神経を刺激してあげると、自律神経のバラスが整い、頭痛も和らぐとされています。
カイロのガンステッド・テクニックによれば、頚椎1番から5番までが副交感神経、頚椎6番から腰椎5番までが交感神経、仙骨(骨盤の真ん中にある骨)は副交感神経に関与していると考えられています。よって緊張性頭痛の場合、副交感神経が抑制されていると考えますので、主に頚椎1番から5番の中で、原因と思われる椎骨を矯正します。
・片頭痛
若い女性20~50歳の女性に多く見られる頭痛で、ズキン、ズキンと心臓の拍動に合わせて、こめかみから側頭部にかけて痛むのが特徴です。原因は側頭動脈の拡張によって、血管周辺の神経を刺激する為だと言われています。原因は他にも諸説ありますが、副交感神経優位な状態の時に発生しやすい頭痛と言えます。これは緊張性頭痛は正反対の状態で、片頭痛の時にマッサージ等を行い、副交感神経を更に賦活する事は逆効果となります。よって交感神経を刺激し、血管を収縮させると頭痛も和らぐとされてきました。
ガンズテッド的には交感神経の抑制状態と考えますので、頚椎6番から腰椎5番までの中から、原因となっている椎骨を探して矯正します。
群発性頭痛に関しては後述します。
これまでの頭痛に対するカイロの考えをまとめると、緊張性頭痛、片頭痛ともに自律神経バランスの不均衡とし、椎骨の変位がどちらかの神経系を抑制していると考え、そこにアジャストメントを行ないます。見事にシステム化され、キレイにまとまっているように感じます。しかし私はこの自律神経の話になると、いつもいくつかの疑問を抱いておりました。一つ目は
1.交感神経をアクセル、副交感神経をブレーキとするなら、緊張性頭痛は
・ブレーキは通常(±)のままで、アクセルを開けすぎ(+)なのか?
・アクセルは通常(±)のままで、ブレーキをかけなすぎ(-)なのか?
と言う疑問です。ガンステッド的解釈で言うなら、ブレーキ(-)と言う考えです。よってアジャストメントにより、ブレーキ(±)にしようと言う考えです。もちろんケーススタディでしょうが、多くのガンステッターはこのように施術します。しかしアクセル(+)ならばどうでしょうか?この場合もともとブレーキ(±)なわけで、アクセル(±)にしなければ解決しません。
そもそもこの2例の判別は?もっと言うならアクセル(+)且つブレーキ(-)のケースだってあるでしょう???と言う疑問にまで発展します。もちろん生粋のガンステッターの返答は予想、想像出来ますがw
次の疑問は
2.交感・副交感神経の片側優位性が頭痛の起因するとするなら
・スポーツ観戦などで興奮状態のときに、緊張性頭痛が出ないのは何故か?
・毎入浴、睡眠時に片頭痛が出ないのは何故か?
と言うものです。1日の中でも交感・副交感神経のシーソーは、あっちが上がったり、こっちが上がったりしています。ならば誰でも皆1日のうちに、緊張性頭痛と片頭痛がコロコロと入れ替わりながらも、ほぼ常時頭痛が感じられることになります。つまり自律神経のアンバランスさだけで頭痛の問題を解決しようとするには無理があると言えます。
つまり自律神経の片側優位な状態は、日常的であるにも関わらず、常に頭痛が出ているわけではないと言う事は、頭痛は自律神経の変化による抹消からの入力のみで発動するのではなく、何か他に問題があるのではないかと言う事です。上記の疑問に対して逆説的な話ではありますが、頭痛で来院される方の多くは、緊張性頭痛と片頭痛が共存しているような症状を訴えます。それはまるで頭痛期に入ると痛みの閾値が下がり、自律神経の変化による抹消からの入力に対して過敏に反応し、緊張性頭痛や片頭痛が入れかわり立ちかわり現れるような感じを受けます。この頭痛期の特徴として、頭部だけでなく頚肩腕周辺の圧痛も上がってきます。代表的なのは肩甲挙筋が付着する肩甲骨上角の圧痛で、頭痛期には僅か1~2kg程度の圧力でも顔をしかめるような圧痛を訴える場合があります。
■疼痛抑制系機能不全による疼痛過敏説
しかしながら実際の臨床の場において、カイロプラクティックは頭痛に対して効果的に作用します。緊張性頭痛で言えば、頭部へのマッサージなどは対処療法に過ぎず、水道の蛇口を開けたまま濡れた床を拭きつづけるようなものです。これに対してカイロの効果は持続的で、根本的治療(古典的カイロ理論以外の)となっている可能性が伺えます。
そこで仮説ではありますが、私はそもそも頭痛の問題は痛みと言う入力系、特に抹消にあるのではなく、中枢にある痛みを増幅してしまう系(中枢感作)と、痛みを抑制する系(下行性疼痛抑制系)に問題があるのではないかと思っています。
中枢感作に関しては、意識上にあがらないような小さくて持続的な刺激が、三叉神経や大小後頭神経等の頭部神経系を介して入力され続ける事によって、本来なら痛みとして捕らえない程度の自律神経の変化に伴う筋緊張や、側頭動脈拡張による抹消からの入力を増幅させてしまうわけです。
この意識下の持続的な刺激の一端として、頚椎の問題が挙げられます。三叉神経系と頚神経系からの中枢性突起は、いくつかの関節レベルを上行及び下行して三叉神経核及び頚髄後角の共通ニューロンに終わります。これは頚神経系からの刺激を、三叉神経系からの刺激と受け止めてしまう可能性を示唆します。と言う事は、長期的な頚椎の問題は、意識下の持続的な刺激となり、これが中枢感作して三叉神経からの刺激を増幅してしまうわけです。つまり頚椎に対するカイロプラクティック矯正は、中枢減感作作用の可能性があります。
個人的には頚椎のストレートネックが、中枢感作に影響を与えていると思っていますので、頚椎前弯を形成する弯曲の中心である頚椎5番と、後頭骨、頚椎1番の土台となり頚神経系にも関与する頚椎2番の矯正が効果的だと思っております。また脊柱全体への刺激は、抹消からの痛覚刺激となり、これが中心灰白質等での中枢による痛覚抑制系を賦活する事になると思います。つまりは擬似的侵害刺激による自己防衛的疼痛抑制発動って感じでしょうか。
短絡的に言えば緊張性頭痛だろうが、片頭痛だろうが頚椎弯曲をメインに、脊柱全体のバランスを診なさいって事になるのですが、これが悲しい事にここまで考えてやっていても、全く何も考えないでやっていても、おそらく同様の結果が得られるって事ですw
他にも女性特有の生理に伴うエストロゲンと片頭痛の問題や、眼性疲労等による緊張性頭痛の問題などもありますので、頭痛と言っても結構厄介で、これが私の頭痛の種だったりするわけです。
■勝てるのか?群発性頭痛
さて最大の頭痛の種、群発性頭痛ですが、その特徴は20~30台の男性に良く見られる頭痛で、眼の奥の激しい痛み(内頚動脈の腫れによる痛み)、痛みのあるほうの眼から涙、充血、鼻づまりなどが特徴です。同じ血管性の頭痛でも、片頭痛が女性に多いのに対して対照的といえます。また片頭痛がセロトニン始まりとするのに対して、群発性頭痛はヒスタミンが原因物質と言われています。
実は私はこの群発性頭痛持ちですw と言うか持ちでした。過去形です。10年位出ていません。しかしこの頭痛のつらさは知ってます。だからこそ、なんとかこの疾患をかかえて来た方には良い結果を出したいと思っているのですが、コイツはなかなかの強敵です。群発期に入ると何をやってもダメな時があります。「男の生理のようなものだから、期間が過ぎれば・・・」と白旗挙げた事もあります。
毎分7ℓの酸素吸入が効果的と言われています。逆に考えれば呼吸器系に関与する脊柱を探り、そこを施術対象とすると比較的早期に群発期を抜けることが出きるように感じます。また頚椎には椎骨動脈があります。これは脳底動脈から内頚動脈となります。この椎骨動脈のカーブが一番キツイ部分が頚椎1番から大後頭孔にかけてです。頚椎1、2番の変位はこの椎骨動脈をさらに弯曲させますので、これが脳へ向かう酸素、栄養素の流を阻害し、それを補うために内頚動脈が拡張⇒血管周りの神経を刺激⇒頭痛と言う図式もありますので、これら上位頚椎に対するアライメントの調整も効果的だと思います。
参考:カイロジャーナル痛みNOTE (守谷先生、徒手医学会発表の時にお世話になりました)
カイロプラクティック・レポート(編集、発行:日本カイロプラクティック評議会)
頭痛大学
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