カイロプラクティックマスターへの道


■名治療家への道

では名治療家になる道を考えてみましょう(笑)。カイロプラクティックのプラシボ効果を考えると、1番必要な要素は信頼であると思います。呪詛や宗教、名医等での奇跡的な回復にプラシボが関与していたとすると、患者さんにこれら術者への信頼がなければ、同様の効果は得られなかった事でしょう。

ではどのようにしたら信頼を得られるのでしょうか。一般社会において、非科学的な要素が前面に押出されたものは否定されて行くでしょう。その意味でカイロプラクティックは、より科学的にその効果を証明しなければなりません。それには再現性が重要な要素とはなりますが、人の身体は単純計算的ではなく、様々な要素が絡み合い、非常に複雑です。

つまり従来のように、ある疾患に対しての緩解率でデータ集計するのではなく、その患者さんの個に対する様々なデータを取って行く事が大切かと思います。それを何例も集計して行く事により、なんらかの関連性を見出し、体系づけ出きるようになるでしょう。そこで初めて再現性が確認出来るようになるのです。

では我々臨床家は、どのようなデータを集計して行けば良いのでしょうか。従来の整形外科的、神経学的検査法、カイロプラクティック独特の動・静的触診に関する検査法だけでは批判の対象となり、再現性としては不充分と言えます。これらの中で痛みを誘発する検査以外は、全て検者による主観が介入する要素は否めません。これは実施する検者によって差が生じてしまうと言う問題が発生します。

しかしこれよりも問題となるのは

「被検者の主観が見落とされている」

と言う点です。

また、被検者の主観は抜けていますが、写真・レントゲン等の画像検査、C3000コンピュターサーモグラフィー、ブラインドスポット等の検査は、検者の主観が介入せず客観的に再現性を求める事が出来ます。同様に術者、被検者の主観が介入しない方法として今後注目したい検査方法は

RIEGL社3Dイメージ:http://www.sunagaimpulse.com/Syozai/Lasersite/RIRGL/3D.html
・スパイナルマウス:http://www.mpjapan.co.jp/product/spinal-m/spinal.htm
・ミノルタVIVID 910:http://www2.konicaminolta.jp/products/industrial/instrument/vivid/vivid910.html
・CENTE(話声からその人の疲れ具合を判定できる装置):http://www.enri.go.jp/kansei/cente.html<特に興味アリ。
*これらアドレスは無許可で掲載しております。不都合があれば、ご連絡下さい。削除致します。

症状の個別性を元に評価方法を考えると非常に複雑となりますが
「症状として現れたものは様々な要因の積み重ねである」
事は前に述べました。これら要因を統括して出した答えが
「症状」
なのです。
カイロプラクティックの世界には“症状を追ってはいけない”と言う掟があります。患者さんの主訴は患者さん自身の主観が大きく左右するので、評価の対象とはなりにくいと考えた結果の掟です。しかし現実的に考えると、来院される方の抱える疾患の多くは、腰痛、肩こりです。この主観中の主観に対して、サブラクセイションを矯正したから後はイネイトまかせ、では通用しません。それこそイネイト教となってしまいます。つまり我々は不可解な「痛み」と言う現象をもっと研究し、もっと考え、追う必要があるのではないでしょうか。患者さんのニーズの多くは痛みを除く事です。逆に痛みによるストレスが除かれた状態であれば、自己治癒力(イネイト)は各組織へ正常に働きかけるようになるでしょう。それが波及効果として、不定愁訴の解決になるとも言えます。

奇跡を起す名治療家になれるかどうかは解りませんが(笑)、今後カイロプラクティックが一般的に認知され、信頼を勝ち取る為には、実質的なニーズである痛みを評価する方法を考え、具体化する必要があるかと思います。痛みの度合いを検査出来る機械は開発されておらず、痛みと言うものが存在しながらも、西洋医学お得意の検査機器による客観的評価は出来ていません。と言うよりもむしろ、痛みと言うのは全くの主観であるので、主観を出来るだけ排除して客観的に評価しようとする現代医学の考えの元では、患者さんの訴える痛みは、ほとんど切り捨てられてきました。もっと解りやすく言えば“痛い”と訴えても、レントゲン等の客観的診断で問題が発見出来なければ、相手にしてもらえないのです。しかし、この主観的な痛みの評価が出来ていない事自体が、腰痛等に関する認識と対策の欠如に繋がっていると思われます。もっと批判的な言葉で言えば、患者さんの主体性を無視し、客観性=科学性との勘違いのまま、人ではなく流れ作業の中の物として考えているように思われます。人として患者さんを診ているのであれば、「整形外科に行ったが何もしてくれない」と言うような評判は聞かないはずです。

では患者さんの主観的な痛みを評価する方法には、どのようなものがあるのでしょうか。まず検査方法として、再現性が無くてはなりません。行う度に違う結果となってしまう検査には信頼性がありません。そして何段階かの数値で表す事が必要となります。これによって施術効果が評価出来るのです。次に施術方針決定に直結していなければなりません。つまり検査の結果から、施術(アジャストメント)を行う必要性が導き出されなくてはなりません。また検査方法そのものに、時間がかかっては実際的とは言えませんし、検査結果分析に時間がかかるのもダメです。そして何よりも経費がかかってはいけません。この検査を導入出来るカイロ師と、出来ないカイロ師が発生してしまっては、カイロ業界全体の一般社会への認知と言う点で劣ります。
さて、このように書くと、非常に難しい検査を行うように感じるかもしれませんが、実に簡単な事であり、既に臨床上では同様の検査を行っているはずです。これをもっとより具体化、統一化し、記録する事で、カイロプラクティックの再現性を証明出来るようになるかと思います。また一時のモーションパルペーションのように、共通認識事項とする事で、手技の違うカイロ師どうしが情報交換する事も可能となります。

Deyoは腰痛調査の治療効果測定について次のような信頼性、及び再現性を報告しています。

<1.00を再現性100%とする>

【身体測定法】

脊柱前屈  0.50

SLR  0.78

足関節背屈  0.50

【患者質問調査】

病状影響の概要(ADLの支障調査) 0.90

Visual Analog Scale:VAS(ペインスケール)  0.94

これにより、術前後での痛みの変化を記録する事が出来ます。

ROM疼痛検査は、日常生活活動で行う動作を簡略化したもので、このROM時に疼痛が確認されなければ、日常生活での支障はあまり出ません。そして、その疼痛の強度を数値化する事で、患者さん個人の、痛みと言う主観の変化を管理する方法としては最適だと思います。つまり皮肉にも、客観的評価よりも患者さんの主観的評価のほうが、信頼性、再現性に優れ、実際的であると言う事になります。

ここで示されている“病状影響の概要”とは問診表のようなもので、立つ、座る、中腰、歩くなどの日常生活で、各項目に痛みの強さを5段階評価し、その合計数字を、疾患の総合的な評価とするものです。

“VAS”とは10cmの線の左端に<痛み無し>、右端に<耐えられない痛み>と表記してあり、患者さんが自分の痛みをその線上に示すものです。同様にNumerical Raiting Scales:NRSと言う検査もあります。10段階で痛みの度合いを評価するものです。

これらの事から、ROM検査時の疼痛強度を、NRSのように数値化する方法が実際的であると考えます。私自身、修行時代から現在までスター式図を使用して、疼痛管理を行って来ました。実際の方法としては、前後屈、左右側屈、左右回旋を行い、各動作で痛みを5段階に分けて表現してもらいます。また、痛みだけでは無く、その可動性も見るようにします。
私達は更にこれを発展させ、その痛みがどこに出たのかを記録しておくようにしました。

スター式図

star2
右側屈:左腰に痛み 2
伸展:L/Sに痛み 2
前屈:腰全体にスパズム 1
左側屈:右腰にスパズム 1
詳細記録型
この図は表記方法は上から見た鼻の向きを示すようにアレンジしている。また、詳細表記する順序は痛みの強い順とする。

しかしこの図表では、実際的な身体の動きをカバーしていませんでした。そこで現在では、3D的に検査内容を拡張して行うように考えています。つまりX、Yの軸だけでは無く、Z軸を加え、各軸方向へスライドする動きを考えるようになりました。そしてこの軸方向へのスライド(トランズレーションと言う)する動きに、従来の回旋と側屈を加えて検査を行うと、上記で再現出来なかったROM時疼痛が再現出来るようになりました。

porom
図以外の動きとして屈曲⇒+RX伸展⇒-RX右回旋⇒-RY左回旋⇒+RY

従来の側屈の動きは、Z軸に対する回旋として表記する。

右側屈⇒+RZ

左側屈⇒-RZ

*回旋をR:Rotationとしたが、θとするのが国際リスティング

詳細記録型を3D表記に変換すると
右側屈:左腰に痛み 2
伸展:L/Sに痛み 2
前屈:腰全体にスパズム 1
左側屈:右腰にスパズム 1
+RZ:左腰に痛み 2
-RX:L/Sに痛み 2
+RX:腰全体にスパズム 1
-RZ:右腰にスパズム 1
となる。更に複雑な動きとして前方移動&右回旋時に痛み5⇒+SZ、-RYで痛み5と表現出来る。表記の方法は自由だが、トランズレーションの概念を組み合わせると、脊柱分析はより実際的となる。

 

しかし、3Dでの動きでも再現出来ない、ある一定の条件の時のみに出る痛みがあります。特定のスポーツや仕事の姿勢などがそれにあたります。その場合はその姿位をとってもらい、改善する方向を探し、施術を行い、再度特定の姿位にて疼痛を検査すれば良いかと思います。また、運動時に痛み等が再現出来ない場合もあります。このようなケースは、その痛み等が、運動器への刺激では変化しにくい事を示しています。

他の心理的な要因や、内科的な要因、中枢の傷害(他の神経学的検査等で確認されるべきだが)などの可能性がありますので、数回の施術で症状が全く変化しない場合は、他の医療機関への紹介も考える必要があるかと思います。

いづれにしても、痛みがその個人の特性によって違う事を考えると、痛みの評価とは、その患者さん個人の心と身体に与えられた刺激を、中枢にて処理した結果と言えます。これは腰痛を例にするなら・・・
カイロプラクティックは、構造だけを見ているのでも無く、客観的な可動性を見ているだけでもなく、神経系機能異常をみているのでもなく、心理的な問題だけを見ているのでもなく、その患者さん全体を見ているのだ
と言えるでしょう。

かと言って、他の所見を全く行わなくて良い訳ではありません。カイロプラクティック・アジャストメントが禁忌な疾患が潜んでいる場合がありますので、それらの選別として従来の検査は必要と言えます。

先人のカイロプラクターで“奇跡的な治療”を行った人達がいます。その事実を元に、カイロプラクティックは運動器疾患だけを扱う訳では無く、様々な難病にも効果がある、と主張するカイロプラクターも居ます。

しかし、先人達の時代は科学で解明されぬものが沢山あった時代です。その時代だからこそ、未科学なカイロプラクティックに期待を抱き、信頼し、その結果として大きなプラシボ効果を得、様々な難病に勝てたのではないでしょうか。

現代は様々な科学的事実が解明され、その情報は数日後には一般に普及する時代です。曖昧なものには疑念の目が向けられてしまうのも、仕方無い事なのかもしれません。イワシの頭を拝んで、苦痛から開放出来ると思っている人はいないでしょう。これは逆に言えば信用されにくい時代とも言えます。

現代医学が排除してきた、患者さん側の主観である「痛み」。この痛みを評価基準とする事で、カイロプラクティックの再現性を主張出来るのではないでしょうか。そして再現性(科学性)に裏付けられた結果をコツコツと積み上げ、地道に信頼を築き上げる事でしか、プラシボ効果を得られるようなカイロプラクターには成れないと言う事だと思っています(笑)。プラシボを自由に使えるようになるには、まだまだ先は遠そうです。